「冷えは万病のもと」という言葉は、今や一般的なものになっており、身体が冷えないよう気を付けている方々も増えてきています。
「冷えが万病のもとなんて大げさだ」と思う方もいるかもしれませんが、東洋医学が考える冷えとは、手足が冷たくなるような、いわゆる末端冷え症のような部分的なものではなく、もっと身体全体に関わる大きな問題です。
それでは、当整体院が考える冷えについて、タイプ別に解説していきたいと思います。
下半身の冷え(足寒状態)
冷えには、大まかに「2つのパターン」があります。
1つ目は、下半身が冷えるパターンです。
まずは、このパターンの冷えについて説明していきます。
私たちの身体の体温は、構造上、上半身が高く、下半身が低くなっています。
体温の分布がはっきり目で分かる、サーモグラフィーで人体を調べてみると、一般的に、上半身は心臓を中心に37度前後あるのに対して、 下半身は足先に行くに従い徐々に低くなっていき、足元は31度以下になってしまいます。
(個人差があります)
普段、あまり意識する事は無いかもしれませんが、上半身と下半身では、意外にも6度前後もの差があるのです。
上半身には、生きていく為に必要不可欠な脳や心臓、各臓器が集中している為、どうしても「血液=エネルギー」が集まってきます。
当然、体温も高くキープされますので、身体の構造上、上半身と下半身の温度差が開くのは、ある程度仕方がありません。
しかし、現代人の多くは、過剰なストレス、慢性的な運動不足、デスクワーク、乱れた食生活、服装の問題などのせいで、下半身が非常に冷えており、そのせいで、上半身と下半身の温度差が大きく開いてしまっているのです。
(注釈)
上半身と下半身の温度差が大きく開いた状態を、菊地屋では「頭熱足寒(ずねつそくかん)」と呼んでいます。これは、心身の健康に良いとされる頭寒足熱(ずかんそくねつ)が反転した状態のことです。
上半身と下半身の間の見えない壁
下半身の冷えが酷くなると、同じ身体の中なのにも関わらず、上半身と下半身の連帯がスムーズに取れなくなってしまいます。
具体的には、上から下、下から上の気の流れ、血流、リンパ液やその他の体液の循環に、滞りが生じてしまうのです。
特に血液は、細胞に栄養や酸素を供給し、炭酸ガスや老廃物を運ぶ働きがあるため、血液の循環が悪くなると、必要なものが運ばれず、不必要なものが排出されない状態になってしまいます。
(これが俗にいう、毒素が蓄積した状態です)
流れが悪くなった川が汚れていくように、全身の循環が悪くなった身体は、あらゆる病気の温床となってしまう可能性があるわけですが、このような現象は、上下の温度が近い時には目立って起こりません。
下半身の冷えが強くなり、上半身との温度差が開けば開くほど、上半身と下半身の間の「見えない壁」は高くなり、さまざまな物質の循環が悪くなるのです。
ちょっとマニアックな、東洋医学的な解釈
こういった循環不全が起こる原因を、東洋医学では、「陰気と陽気」の特性にあると考えます。
陰気とは、身体を下から上に流れる気のことであり、陽気とは上から下に流れる気のことです。
二つの気には、「陰気は冷たい場所を好み」、「陽気は温かい場所を好む」という特性があります。
つまり、下半身が過剰に冷えていると、陰気は上半身に向かわず(冷えている場所を好むので)、陽気は温度の高い上半身に留まってしまうことになり、下から上、上から下の気の流れが停滞してしまうのです。
このことによって、気という先導役を失った、血液、やリンパ液、その他の体液の循環が滞ってしまい、さまざまな病気の原因になってしまうわけです。
足湯や半身浴、足裏マッサージなど、下半身の血行を良くする健康法が多いのも、下半身の冷えによる危険性を感覚的に知っていた先人たちの知恵なのではないかと思います。
下半身の冷えが強くなり、上半身との温度差が開けば開くほど、気の流れ、血流、リンパ液やその他の体液の循環に滞りが生じる。
流れが悪くなった川が汚れていくように、循環が悪くなった身体は、栄養分や酸素の摂取、老廃物や二酸化炭素の排出がスムーズに出来なくなる。
結果的に、体内に毒素が蓄積していき、病気になりやすくなってしまう。
〇下半身の冷えによって起こりうる症状例
のぼせ、頭のもやもや感、各種頭痛、不眠症、肩こり、眼精疲労、自律神経失調症、うつ、更年期障害、感情のコントロールが出来なくなる、考え過ぎ、悩み過ぎなど・・
身体の深部の冷えについて
2つ目のパターンは、身体の内側、深部に冷えがたまるパターンです。(からだが芯から冷えてる・・なんて言い方もしますね)
あまり良い例えではありませんが、このパターンの冷えを抱えている方の身体は、うまく解凍できなかった食べものと同じように、外側は温かくとも、内側は冷たい状態にあります。
体感としては、体表近くに集まる熱によって、季節に関係なく「ほてり」を感じる方が多くいます。
身体の深いところは冷えているにも関わらず、表面的にはほてっている感覚は、通常なら不快感をともなうものだと思います。
しかし、この状態に慣れてしまっている方にとっては、その違和感さえも感じなくなっていることも多いようです。
下腹部を触った時に冷たいと感じる方や、お風呂に入っても、底冷えがなかなか改善されない方などは、身体の深部に冷えが蓄積してる可能性があります。
このタイプの冷えが酷くなると、周囲が暑い暑いと嘆いている真夏でも冷えを感じ、長そでを着ないと寒いという状態になってしまう方も稀にいます。
ここまで悪化してしまうと、内臓の機能は著しく低下し、自律神経系も相当乱れているはずですから、すぐにでもケアする必要があるでしょう。
あらゆる内臓機能が、冷え=血行不良によって著しく低下してしまう。
このパターンの冷えの特徴によって、「ほてり」を感じることが多いため、症状の進行に気づきにくい。
〇深部の冷えによって起こりうる症状例
あらゆる内臓疾患、癌、各筋肉の痛み、間接の痛み、婦人科系の症状(生理痛、子宮筋腫、内膜症、卵巣嚢腫、腺筋症・・他)不妊など・・
それぞれの冷えのパターンについてのまとめ
これまで下半身に冷えがたまるパターンと、身体の深部に冷えがたまるパターンについて解説してきました。
改めておさらいすると、下半身の冷えが強くなると「上半身との温度差が開き過ぎてしまい、気の流れ、血流、リンパ液やその他の体液の循環に滞りが生じる。」
そして、からだの深部が冷えるていると「あらゆる内臓の機能が低下してしまう」
ということです。
血液や体液の循環が滞り、内臓機能も落ちてしまえば、病気になりやすくなるのは当然です。
冷えは万病の元といわれている理由も、お分かりいただけたのではないでしょうか。
冷えは目に見えるものでは無いため、なかなか実感が湧かないのも仕方ないのですが、実は結構怖いものだという認識は持っておいてください。
ちなみに、便宜上、冷えを2つのパターンに分けて説明してきましたが、実際には、片方の冷えだけが現れるということはなく、大抵の場合、どちらの冷えも持っているものです。
2つの冷えの改善方法は、下半身を温め、上半身ののぼせを取る頭寒足熱・冷え取り健康法を行うことによって、両方同時にケアできます。
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