声が出せない病気を克服するために、私が取り組んだこと

半身浴

 

けいれん性発声障害(SD)の症状は、一般的に、緊張状態の時に悪化すると言われています。
そのため、「もっと身体の力を抜かなきゃ」「リラックスしなきゃ」と努力した方も少なくないはずです。

しかし、いくら頭でそう思っても、普通は、なかなか身体が言うことをききません。
そこで、おすすめなのが半身浴です。

血液循環を良くし、物理的に全身の筋肉をゆるめられる半身浴を徹底して行うと、少しずつ身体の力が抜けていきます。
だんだん力が抜けていくことも大切なポイントですが、もっと重要なことは、湯船に入り、最高にリラックスしている状態=力が抜けている状態を、「体感として記憶すること」です。

なぜ、そんなことが大切なのかと言えば、臨場感が強い記憶は、身体に大きな影響を与えるからです。
例えば、過去に体験した、一番恥ずかしがったことや、辛かったことを思い出したとします。

その記憶が鮮明であればあるほど、心拍数や血圧が上がったり、涙が出てきたりする傾向があります。
つまり、身体が、その体験をした当時と同じような状態を再現してしまう訳です。
このメカニズムを利用すれば、湯船に入っている時の体感を思い出すことで、身体の力が抜けた状態を再現することも可能です。

完全に再現することは難しくても、リラックスした状態の体感記憶が有るかどうかが重要なのです。
なぜなら、力が抜けない主な理由は、いつも身体が緊張しているのが当たり前で、「抜けた状態を体感的に知らない」からだからです。

リラックスしている時に声が出やすいことは、この症状の一つの特徴ですから、取り組む価値は大いにあると思います。
私は、「今日はしっかり話せないとまずい」という日の朝には、いつもより長めに半身浴をしていましたが、身体が芯からゆるみ、声の出方も明らかに違いました。

※ちなみに半身浴は、声の症状だけではなく、あらゆる症状に効果的ですし、ストレス発散にもなりますので、是非、生活に取り入れてみてください。

イメージング発声法

 

気功や武道の世界には、自分の意識をコントロールすることで、身体状態を変える技術がいろいろと存在します。
アスリートの世界でも、あるプレーをする時に、必ず身体のある部分に意識を集中するとうまくいく。というようなコツを、それぞれに持っているものですが、それも同じような技術と言えます。

一般の方が、ここまで高いレベルのことを目指す必要は全くありませんが、私たちにも簡単にでき、うまくいけば、声を出しやすい身体状態を作りだす方法があります。
それでは、早速、方法を説明します。

まず、あなたが声を出そうとする時、自分の意識が、身体のどの辺りにあるかどうか検証してみてください。

私自身もそうでしたが、おそらく、声やのどの症状がある方の多くは、のどや首の周辺に意識が集まっているのではないでしょうか。
これは、声をうまく出そう出そうとする意識の現れだと思いますが、過剰にある部分を意識すればするほど余計に力むものです。
(無理やり声を出そうとして、無理やりのどや首に力を入れすぎると、筋肉の運動性が低下し、硬くなってしまいます。つまり、更に声を出すことが難しくなるのです。)

そこで、私が実際に行っていた方法は、「自分の口がみぞおちにあったと仮定して、その部分から、息が出てくるつもりで発声する」というイメージング発声法です。

人によって、最適な場所は違うはずなので、下腹や骨盤、場合によっては背中など、いろいろな場所で実験してみるといいと思います。
ちなみに私は、みぞおち以外に、首の後ろ側、肩甲骨の間辺りをイメージすると、のどの力みが減り、少なくとものどに意識があった時よりは、声が出やすくなりました。

ポイントは、イメージした場所に口があったと仮定して、その部分から息が出てくるつもりで発声することです。

気功

 

手前味噌になってしまいますが、けいれん性発声障害(SD)が、脳のプログラム異常で起きる病気だとすれば、脳へのアプローチに長けている気功の技術は有効だと考えられます。

また、脳のプログラム異常と言っても、それがなぜ起こるのか解明できていないことを考えると、「現代西洋医学の守備範囲ではないところに原因があるのかもしれない」と推論することは、理論的に無理がないはずです。
そういった意味でも、気功だけでなくさまざまな施術法を体験し、可能性を広めることも必要かもしれません。

病気との向き合い方

 

これは何もけいれん性発声障害(SD)だけに限ったことではありませんが、難しい症状になればなるほど、あなたがそれをどう受け入れているかというスタンスが大切になってくると思います。
私の症状が劇的に改善したのは、一度目、二度目とも、「もういいや」と何かをあきらめたような心境になってからでした。

一度目の時は、歌をうたうこと=ミュージシャンになることをあきらめ、二度目の時は、このままの声でもまあ仕方ないかなと、症状を受け入れるような心持ちになったのを覚えています。
(詳しくは、闘病記(私が苦しんだ原因不明の病気)をご覧ください)

こんなことを言うと、「この症状に、精神的なものは関係ないんですよ」と怒られてしまいそうですが、私が言いたいのは症状の原因の話ではなく、症状改善のためにどのような精神的態度をとった方がより改善の可能性が高くなるかという話です。

ニュアンスをお伝えするのが、非常に難しいのですが、投げやりになるのではなく、腹をくくるというか、そのうちなんとかなるかなくらいの、穏やかな気持ちの中、施術やセルフケアを行っていくと、臨床的に症状の改善率が飛躍的に上がるのです。

このような統計をみても、症状とどのように向き合っていくかという問題は、非常に大切だと考えています。
こういった背景を元に、菊地屋では、身体的なケアはもちろん、精神的なケアを重視した施術を大切にしています。

施術の目的

 

完全に元の声に戻すというよりは、まずは「声を出しやすくする」ことをメインに施術していきます。
急がば回れと言いますが、この方法が最も現実的であり、その延長線上に完治という状態があるのだと考えています。