読書について

人を深く描写しようとすると、重くて暗くなる。空白の叫び/貫井 徳郎・著を読んで

上中下巻に及ぶ、大作を読んだのは、貴志祐介さんの、「新世界より」以来でした。

これぐらいの長編になると、途中で読む気力が無くなったらどうしよう・・という心配が芽生えるもので、一年以上、手を付けなかった作品です。

97841676820401

空白の叫び
貫井 徳郎・著

・あらすじ

退屈な日常の中で飼いならしえぬ瘴気(しょうき)を溜め続ける久藤。恵まれた頭脳と容姿を持ちながら、生きる現実感が乏しい葛城。複雑な家庭環境ゆえ、孤独な日々を送る神原。世間への違和感を抱える3人の少年たちは、どこへ向かうのか。少年犯罪をテーマに中学生たちの心の軌跡を描き切った衝撃のミステリー長編。解説・羽住典子
文藝春秋ホームページから抜粋

本好きの方なら分かると思いますけど、その本と出会うべくして出会っているように感じるタイミングがあるものです。

そんなこんなで、なんとなく「今なら読めるかも」と思ったわけですが、貫井さんは、やっぱりすごい。

こんなにも、重く、暗い読後感を与えてくれる作家さんは、そうそういません。

「重くて暗いなんて嫌じゃん!」と思う方も少なくないでしょう。
だから、そういうのが苦手な方にはおすすめできないかもしれません。

でも、登場人物を深く描写しようとすると、重くて暗くなるのは仕方ありません。

だって、大抵の人間は、心を裸にしてしまえば、善よりも悪の方が勝るからです。
(元が良くないからこそ、理性や道徳が必要なのだし、精神的に成熟していくことが大切なんだと思います。)

この作品の主人公である三人の内二人は、そのことに自覚的です。

自分の中に、どうにもならない悪(作中ではこれを「瘴気(しょうき)」と言っている)が眠っていることを、病的なほど冷静に把握し、そんな自分を死ぬほど嫌っています。

しかし、もう一人は、そのことにまったく無自覚です。

自分の内側には、悪はなく、悪いことをしたのは、そうせざるをえなくさせた環境のせい、または、そこまで追い込んだ他人のせいだと思っているわけです。

同じ殺人犯であっても、この差は大きいですよね。

本当に恐ろしいのは、このように、自分に対する客観性を持っていない人間なんだなと思いました。

でも、そういう人って、そこら中にいるんですけどね・・

関連記事

  1. 読書について

    気まぐれに発表する先月に読んだ本「2014年7月のまとめ」

    先月は、いろんなジャンルの本を読んでみました。どれも良かっ…

  2. 読書について

    江戸っ子の生き様に学ぶもの・・ 研ぎ師太吉 / 山本一力を読んで

    〇感想山本一力さんの小説の多くは、江戸時代の深川が舞台になって…

  3. 読書について

    すべては生きるために・・ 閉鎖病棟 帚木蓬生/著を読んで

    〇感想著者初読でした。現役の精神科医の方が書いただけあって、登…

ブログ

  1. 【沖縄旅行】きれいな海、心地よい波の音、美ら海水族館の映像&…
  2. 「症状があるのに検査しても異常なし(不定愁訴)」と言われた方…
  3. あなたは自分に流れる「血筋」について考えたことはありますか?…
  4. 子授け子育ての祈願が盛んな子之神社でお参り
  5. 2015年に観た「113本」の映画の中から、個人的におすすめ…
  1. 読書について

    現実なんて曖昧なもの、だからこそ「救いがある」。 アミダサマ/沼田まほかる著を読…
  2. 読書について

    それでも人は生きていけるものなんだという希望 おすすめの本 「後悔と真実の色 著…
  3. 患者さん向けのコンテンツ

    当院の患者さんへ。本の貸し出しについてのルール
  4. 読書について

    人を深く描写しようとすると、重くて暗くなる。空白の叫び/貫井 徳郎・著を読んで
  5. 患者さん向けのコンテンツ

    好転反応(毒出し)はなぜ起こるのか?
PAGE TOP